私にはフリーター医師だった時期がありました。
フリーター医師になる前までは、週に4日勤務でした。常勤とも言えない、非常勤的な常勤でしたが、病院を通じて自動的に健康保険にも加入している状態でした。
そして、「今月末には今いる病院を辞めて、来月からはフリーの医師としてやっていくぞ!」ってときに、どのような手続きが必要なのか、当時ネットでもだいぶん調べました。
ところが医師って他の職種と違い少し特殊なので、調べることは結構多かったんですよね。
この記事では当時調べたとことをもとに、あなたが来月からフリーター医師になる方に必要な手続きについて書きます。
結論としては
- 健康保険は任意継続に変更
- 厚生年金は国民年金に変更
- 勤務医中に天引きされている雇用保険は、退職後バイト生活になれば活用できないのであきらめる
- バイトでの収入が主になると、いろいろリスクが増えるので医師賠償責任保険に登録
になります
退職したら健康保険はどうすべきか?
あなたの給料がよほど低くなければ、退職と同時に「任意継続」という今の健康保険をそのまま引き継ぐことのできる制度を使うのが一番お得です。
※ただし、日本医師会に加入されている場合は医師国保の方がお得ですので、そちらで手続きしましょう。
病院を退職すれば、加入している健康保険は退職と同時に無効になります。
つまり何も手続きしなければ退職と同時に無保険になってしまうのです。
その場合、
・国民年金に加入する、もしくは
・任意継続の制度で現在の国民健康保険をそのまま引き継ぐ
の2択になります。
ではどうして任意継続のほうが得なのか?
以下に国民健康保険料と任意継続にかかる保険料それぞれを、毎月いくら払わなければならないのか比較してみます。
国民健康保険
国民健康保険料はあなたの年齢や年収、居住地によって変わります。
ざっくりいうと、あなたが単身者、39歳以下で、年収800万なら月々49,000円、1000万なら月々63,000円くらいの国民健康保険料を支払う必要があります。
※詳しく計算したい方は「国民健康保険料」+「計算」+「あなたの住んでいる市もしくは区」で検索してみてください。
これめちゃくちゃ高いって感じますよね。
私は心身ともに健康でしたので、たとえフリーター医師になっても
「病院に行くことはめったにないだろう」
「もしもなにか病気になれば大きな病気である可能性は低いだろうし、自費で行ったほうが安いんじゃないか?」
と一瞬考えました。
つまり健康保険制度は病気や怪我をしない人、入院をしない人にとっては、加入のメリットはほとんどありません。
しかし日本は「国民皆保険制度」です。すなわち、日本国民は全員なんらかの保険制度への加入を義務づけられています。
抜け道はありません。
しばらく無保険でいて、必要になったタイミングで国民健康保険に加入するなり、もしくはどこかの病院に常勤勤務になってから健康保険に入れば、それまで加入していなかった保険料は浮くんじゃないか?と考えたりしましたか?(笑)
私は考えましたよ。
しかし過去に健康保険に未加入だった時期を国は把握しています。
そのため、たとえ途中から国民健康保険などに加入したとしても、健康保険に未加入期間の保険料は追加で払うことが義務づけられています。
このため、何らかの健康保険に結局入る必要があるのです。
任意継続
任意継続は今の病院を退職しても今の健康保険をそのまま引き継ぐことのできる制度です。
あなたが病院を退職して健康保険を喪失してから20日以内に申請する必要があります。
低収入の方は国民健康保険へ移行したほうが保険料はやすくなりますが、
高収入である医師の場合、保険料に上限が設定されていますので任意継続のほうが安くなります。
任意継続の期間は2年間までです。
それ以降は国民健康保険への加入が必要になります。
そのため病院を退職しフリーの医師になったら、20日以内に任意継続の手続きをしましょう!
年金
退職すると厚生年金から国民年金へ変更する必要があります。
国民年金保険料は月々16,540円です(令和3年度)。
国民年金を払わないという選択をすることも可能です。
しかし国民年金を払わないことのデメリットはあまりにも大きいので、ここは素直に払うことをおすすめします。
なぜなら、国民年金は国が破綻しない限りは、そしてあなたが早死にしない限りは全額とは行かなくても多少は戻ってきますし、なにより国民年金を払わないことの大きなデメリットは、障害年金を貰えなくなることです。
あなたが健康とはいえ、例えは事故などで大けがをして後遺症が残ったり、うつ病などの精神疾患で働けなくなった場合、国民年金を払っていれば、障害年金を受給できるからです。
毎月天引きされている雇用保険を退職後に生かすことは可能か?
勤務医の間は、雇用保険を毎月給料から天引きされいるので、雇用保険をあなたは毎月強制的に支払わされています。
もしもあなたが現在の病院を退職し、フリーの医師になった時、雇用保険を生かすことはきるのか?
結論から言うと、あなたが病院を辞めたからといって、雇用保険を生かして、例えば失業保険をもらうなどは難しいです。
なぜなら就職する意志がない人は失業保険を受給することはできないからです。
さらに、失業保険をもらいながら、バイトをして収入を得ることはできないからです。
失業保険をもらうためには、ハローワークに行って手続きしたり、いろいろ面倒です。
そもそも就職する意志のない人が失業保険をもらうことはできないので、ここは素直に雇用保険を生かすことはあきらめて、普通に医師バイトをするとよいでしょう。
医師賠償責任保険
ほとんどの病院は病院賠償責任保険に加入しています。
そのため、たとえ医療ミスや言いがかりのようなことであなたが訴えられたとしても、訴訟費用などは病院の保険でカバーできることが多いです。
しかしあなたが病院を退職して、バイト生活になった時にはどうなるか?
もしもバイト先で起こったトラブルについて訴えられた場合、守ってくれることは少ないでしょう。
さらに、日本でも医療訴訟は毎年800件前後おこっています。
もしも医療訴訟なんてことになると、裁判も長く続けば弁護士との話し合いの時間もとられますし、精神的にも消耗するでしょうし、さらにお金の心配もしないといけないので、心理的にもかなり追い込まれることになります。
例えあなたが正しい医療行為をしていたとしてもトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
例えば最近あった、乳腺外科医が手術後の女性患者の乳首を舐めたと訴えられて準強制わいせつの疑いで逮捕されるということもありました。
このような確率は低いでしょうが、たとえあなたが正しい事をしていたとしても、いつなんどき訴えられるかはわかりません。
そのため、フリーター医師が個人で医師賠償責任保険に入るのは必須と言えます。
もちろんあなたが病院勤務であったとしても、病院とあなた個人両方を訴えるケースもあります。
その場合は病院の保険だけではカバーしきれないこともあるため、たとえ病院勤務であっても、個人で医師賠償責任保険に入っておいた方が安全ともいえます。
医師賠償責任保険で最も有名なのは、民間医局が扱っている医師賠償責任保険です。
なぜこの保険が人気なのかというと、団体割引として2割引きで加入できるからです。
私も他社を含めていろいろ比較しましたが、医師賠償責任保険って結構高額なんですよね。
その点、民間医局でしたら、割引もありますので、他社に比べると安めです。
さらに、民間医局が団体で加入する保険会社は三井住友海上です。決して民間医局の会社が保険を単独で運営しているわけではありません。
三井住友海上は大手ですし、万が一訴訟になった場合はちゃんとした対応をしてくれるだろうという安心感があります。
まとめ
もしもあなたが明日からフリーの医師になる場合に必要な手続きで最も優先すべきことは、健康保険を任意継続に変更することです。
この手続きは退職後20日以内に行わないと無効になります。
もしも任意継続の手続きを忘れてしまうと、保険料が月にして数万円以上高額な国民健康保険へ加入する必要が出てきますので、任意継続の手続きはかならずやっておきましょう。
またバイト生活になると、訴訟から守ってくれるものは何もありませんので、医師賠償責任保険にも加入しておいたほうがいいでしょう。